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感想『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』欠けているピースと無理やり当てはめた不自然なピースはどれか。本当の謎に迫る

映画「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」オリジナル・サウンドトラック

 

今、絶賛公開中の『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(タイトル長い)

いわゆる『スマホを落としただけなのに2』です。正当続編ですよ。

 

今回の主人公は前作で田中圭カップルを救った千葉雄大演じる加賀谷学が主人公となる。

個人的には主人公が変わる、こういう映画の構成は結構好きなんですよ。

長編オムニバス作品みたいな感じで同一世界観で主人公が変わるって楽しくないですか?笑

違う視点って意味では湊かなえさんの『告白』みたいなものや、同一世界観でいけば『3年A組』と『ニッポンノワール』みたいなの。

世界が広がるし、ほんの一瞬でも関連するような人物や出来事が語られると「おぉ!」ってなる。この作品では田中圭北川景子がガッツリ冒頭に出てくるし、前作の事件も軽くおさらいする親切すぎるくらいの親切設計。

「話題だから〜」って人や「白石麻衣目的!」みたいな初見の人もいるだろうからね。

 

まいやん、可愛いけどまだもうちょっとお芝居がんばったほうがいいかな。見れない程じゃないけど、まだまだ伸びしろが大きそう

 

 

本編の内容

ある白骨死体を追う中で「M」という人物が捜査線上に浮かび上がる。この人物は前作で捕らえた浦野にハッキングを教えた、いわば師匠的な存在だ。Mを捕まえるために警察は浦野と協力して捜査をしてゆく

 

 

はいキター。強大な敵を目の前にしてかつての敵と協力するパターンのやつ!

フリーザと戦う悟空&ベジータ&ピッコロ

インペルダウンを抜け出すため共闘するルフィ&クロコダイル&バギー

この少年漫画的な熱い設定

 

前回、加賀谷を苦しめた浦野が味方になる。しかもこういうタイプの人物は一筋縄では言うことを聞かない。精神的負担を強いるような交換条件を提示する。無理難題を言うのではなくて考える余地のある程度で条件を出してくるあたりが浦野の頭の良さが際立つ。

というか浦野役の成田凌ノリノリである。前作の怪演もすごかったが、現実離れしたようなキチガイキャラを演じるのが楽しいのかもしれない

 

加賀谷は浦野の協力もあり「情報の不足している部分」や「不足を補う方法」を模索してMに近づいていく。。。

 

 

映画「スマホを落としただけなのに」オリジナル・サウンドトラック

映画「スマホを落としただけなのに」オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト:大間々 昂,兼松 衆
  • 出版社/メーカー: SMM itaku (music)
  • 発売日: 2018/10/31
  • メディア: CD
 

 

それでは、以下ネタバレ込で感想を綴りましょう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浦野の協力によってそもそものアクセス数が不足していることが判明。

Mを釣るために、加賀谷は警察公式セキュリティブログの解説・加賀谷の彼女もおとりとして日々のSNS更新をすることとなる。

そのふたつを交互に監視しているアカウントを突き止め、浦野特製のウィルスを利用し顔を割り出す。こうして不足していたピースから真のピースを引きずり出す。

 

しかし、ついに襲われる彼女。助けるために加賀谷も動く。

 

 

 

無理やり当てはめた不自然なピース

 

大筋はいいんだよ。王道で。

でも、あまりにもご都合主義がすぎる。ひどすぎるよこれは。

 

展開を作るためのキャラ設定や特別措置、多少は必要なのも認めるんだけど、全部を展開のための装置にしちゃいけない。

 

ずっと黙秘をしていた浦野が「加賀谷となら話す」ということで加賀谷が出てくるが、それまでの取り調べはどうしてたんだ。なんでもっと早く加賀谷に取り調べ要請しなかったんだ?

というか、牢で会話すんの?初めて行ったとき隣にも人いたよね?

 

 

素人目でみてもあまりハイスペックじゃなさそうなパソコンルームに、今どき実在してるのか分からないくらいこれでもかと昔ながらの嫌な監視役の警官と、その幼稚な嫌がらせ。

通常の検索Webみたいな闇サイト(なお、僕は闇サイトを知らないので本当にあんな感じだったらすみません)

あまりにも情報リテラシーのない情報室の室長

彼女を24時間警備してくれるの一人だけ?めちゃくちゃ不安じゃないそれ?

 

 

もう、「浦野 脱獄させます!」そのために嫌な監視につけこむ隙を与えたろって道筋が観ててわかる。

バックドアやカメラ監視のスパイウェアの説明役が必要なのはいいけど、なんでよりによって情報室の室長なの・・。あんなのが上司ってあまりにも神奈川県警のセキュリティ意識が・・。いや、やっぱ世の中そういうもんなのかな?警察の情報部だろうと天下りでズブの素人でも責任者になっちゃうもんか?

 

ストーリーを進めるために無理やりガバガバの設定にしてるから中身がスカスカ

この映画を作る上でどこが本当に必要なピースで、どれが不自然なピースなのか、そしてどこのピースが欠けているのか。それを考えだしたらこのパズルの存在そのものがまるでミステリー。。

 

 

でもこの物語にはひとつ大きな謎が隠されていることに気づいてしまった

 

 

正しいピースと隠された真のミステリー 

犯人やその動機なんかは案外あっさり気づいた。というか、ITリテラシー高い登場人物少なすぎてそもそもの選択肢もない。

加賀谷へのボディタッチと結婚相手を求めないとこ、冒頭のBLを伏線として(これは伏線というよりヒントか)加賀谷への告白も特に驚きもなく・・。

とはいえ、このあたりの配置は丁寧だ。

学生時代の千葉くん(加賀谷というよりは千葉くん)がかわいいから仕方ない。

会社設立時の写真なんていい笑顔してる。

 

個人的に最後「気づいていただろう」と手を握る笹岡、手を離すものの少しだけ複雑な表情をする加賀谷のシーンは印象に残った。

おそらく笹岡の気持ちに気づいていたんだろう。そのうえでふたつのパターンを想定してみる。

ひとつは気持ちには気づいているが、気持ちに応えることができないから退職した。

父親のことを調べる口実もあり、互いにいい「仕事の」パートナーとして関係をきれいに終わらせた。

 

もうひとつは、加賀谷はバイ(両刀:両性愛)で笹岡に対して気持ちもあった。ただそれを受け入れておらず、気持ちを閉じ込めるための退職。

美乃里を恋人登録できなかったり、結婚の話をうやむやにしていたのは、心の奥に笹岡がいたせいだ。

捜査上に笹岡のログが浮かび上がった際も「彼女の現状を話しているから当然」と疑いを全く向けていなかった。(まぁ、これに関しては信頼しているという点では恋心以外の説明もつくからなんとも・・)

 

正直なところ加賀谷が結婚を考えていない理由がこの物語のパズルのピースとして欠けているのだ。

前作の北川景子が演じる稲葉麻美が結婚を拒む理由は謎のひとつとして引っ張られ、衝撃な告白として明言された。しかし、加賀谷が美乃里に対して結婚どころか恋人としての不自然な態度である理由が「母の虐待」だとするとミステリーとしてはちぐはぐしていないか。

 

仮に、交際に自信がない理由が「母の虐待」だとしよう。加賀谷はまだ作中で母と再会していない。すると、虐待のトラウマを解決する前に恋人に対して前向きになってしまう。作中ではクライマックスのシーンのあとにトラウマである母に対峙するのだ。交際に意欲的でないことと虐待の前後関係が逆になってしまう。

 

それよりは「虐待のトラウマ」はミスリードだとしてみるほうが前後関係がスムーズになる。

笹岡に対する気持ちがずっとくすぶっており、美乃里を恋人として愛していける自信がない。

「人前で」キスという行為が周囲への宣言となってしまう。だからキスをすることができなかった。

でも、今回の事件を通じて美乃里の大切さを感じ、笹岡に失望し、自分の気持ちに整理をつけることができた。結果として恋人を失いたくない、彼女が本当にいま大切な人物なんだと再認してクライマックスのキスにつながるのではないか。

このキスを経て彼女とともに「虐待のトラウマ」へはまさにこれから向き合おうとしているのだ。

 

 

 

浦野が協力する条件に「加賀谷の誰にも言っていない秘密を明かせ」とある。

加賀谷は「嘘をつくかもしれない」と言い、浦野は「俺を騙し通せるか?(=一番秘密は検討がついている)」と返す。

具体的に浦野に話すシーンはカットされているが、後半に浦野の口から「父親の事件と母親の虐待」が交換条件で話した内容だとカメラの前で暴露される。

 

でも実際あの当時の加賀谷が「本当に」誰にも言っていない秘密が「笹岡への気持ち」だったとしたら・・・。加賀谷はまんまと浦野を嘘で騙し通せたのではないか。

 

どこにも明言はされていない。ただの憶測に過ぎない。

これこそがこの物語の本当のミステリー部分だとしたら・・・

 

 

スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者:志駕 晃
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2018/11/06
  • メディア: 文庫