ゆうがたヒーロー

日曜の朝でなくても誰だってヒーローに憧れてる

総括『デジモンアドベンチャー02』おもしろいのに不満が多い02に欠けていたものとは。

デジモンアドベンチャー02 ベストヒットパレード

 

デジモン」といって思い浮かべられるのは太一とアグモンらの冒険を描いた「デジモンアドベンチャー」だ。一般的?なのかはわからないけれども02との区別のため「無印」と呼ばれることがある。

実際僕もデジモンといえば「無印」だと思っているし、「Butter-Fly」「Brave Heart」こそデジモンの名曲だと思っている。

だけれども地続き正当続編の「02」の存在は絶対に無視できない。

 

「無印」と「02」を久しぶりに見てみたけれども、正直どちらもおもしろい。

とはいえ「02」はあくまで「無印」の存在があってこその物語であることには間違いない。どうしたってデジモンの話題になると「無印」とを切り離して「02」単独で評価するのは難しいのが現実だ。

 

物足りないキャラクター描写

イマイチ02の人気がなく、影が薄いのはなぜなのか。おそらく02加入チームD-3 組のキャラが無印組に完全に喰われているのが原因だ。

無印はデジタルワールドの冒険を8人+8匹の16キャラクターを動かしながら展開してきた。はっきり言ってこれだけのキャラクターを余すことなく冒険を進めるのはかなりの難易度だ。

同じく東映シリーズの特撮「宇宙戦隊キュウレンジャー」では初期メンバー9人に追加戦士3人の12人体制で1年間物語を進めていたけれども、正直持て余していた感は否めない。アニメーションと違って役者の都合や玩具の映し方なんかも縛りがあるのかもしれないけれども、人数が多くなる分ひとりに割ける時間が減ってしまう。キャラクターの掘り下げが散漫になるのは自明である。

しかし、思い出補正かもしれないけれども「無印」はそれをやりきったと思っている。

それぞれのキャラクターの絡みから性格や価値観を描写し、ときに対立し、協力し、最終的に共通の目標に向かっていく。加えて終盤には今までのゲストデジモンを再登場させることでそれまで積み重ねてきた経験に説得力が増してくる。書けば書くほど筆が止まらないくらいに無印の構成に脱帽する。

 

話を戻そう。では「02」はどうなのか、と聞かれれば疑問符がつく。

02では正直「一乗寺賢」くらいしか掘り下げていないんじゃないだろうか。

物語上のいい役割をもらっているから他より描写が多いだけで、賢ですら掘り下げていると言っていいのか微妙なくらいだ。ただ、一番他のメンバーとの交流が多かったような気がする。親友になった大輔と賢に好意を持った京、なかなか敵対心が解けなかった伊織、光と闇で引き合うヒカリと闇を憎んだタケル。各々から向けられる気持ちの違いをひとつひとつ受け止めていった。賢という存在を通して02メンバーの思いの違いを浮き彫りにした。

 

02では全員がまとまって行動することが多い。グループで活動するとよくあるのがメンバー内にふたりになると気まずい相手がいるというあの現象。他の人がいれば話をするけど、ペアになる際に選択肢にない相手がという経験はないだろうか。

02って仲良くしているけど交友関係が限定的な気がしてならない。最も顕著に描写したのは伊織がタケルのことをよく知らない、と考える話だ。ジョグレスの相手はタケルだと確信しているにも関わらず、いまいちタケルと気持ちが通じていない。

02はペアに分かれて行動することが少なかった。その分、キャラの掛け合いによる価値観の違いをぶつける場面が少なかったんだと思う。

例えば無印でいえば太一と光子郎、ヤマトと丈といえばペアのイメージが湧く。かといって他のメンバーに差し替えてもなんとなく形にはなる。あれだけキャラがいてもデジタルワールドを冒険する上ではさまざまな組み合わせで活動するのが当たり前だったからだ。

02組はというと、鈍感な大輔は余り物で京&伊織とタケル&ヒカリの組み合わせをイメージしやすい。ところが人数が少ないのにこの組み合わせを差し替えて京&タケルと伊織&ヒカリにするとどんな場面か想像ができない。そのどちらかのペアに大輔を加えても違和感は拭えない。

京&ヒカリ、伊織&タケルは最終的にジョグレスをするためペアと言われればしっくりくるけれども、実際ジョグレス以前の伊織とタケルってデジモンカイザーのアジトへ向かうときなど、短期的な共同作業で一緒にいたかなって感じだ。そりゃ伊織にとってタケルがジョグレス相手だと思ってもイメージが湧かないのも無理はない。(個人的にはオープンな大輔に対し賢がいつ心を開いたのかはまだピンときていない。インペリアルドラモンはともかく、なぜあの場面でパイルドラモンになれたのか)

 

様々な組での関わりを観ることができれば面白さが増えたと思う。実際、世界で暴れるデジモン編では無印組&02組の珍しい組み合わせを見ることができておもしろかった。

もっと無印ばりに別行動のシナリオを増やしてもよかったんじゃないかな。

それにデジモンたちも全員が妙にマイペースだ。ブイモンは主人公格のデジモンなのに飯食ってる場面しか性格を思い出せない。

新規キャラは4人+4匹の8キャラクターだ。無印単体と比較するとキャラは少ない。

だけど実際のところは02の8キャラクターに無印の16キャラクターを合計した24キャラクターを動かしていた。これは味方の主要キャラだけだから驚きだ。

どうしたってすでにキャラが確立されている無印組へ意識は持っていかれるだろう。

結果としてデジモンも人間も全般的に「無印」が濃く、「02」が薄い。というのが02キャラのイメージになってしまった。

 

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黒幕に次ぐ黒幕のストーリー展開

デジモンカイザー編がおわり、作中で明言されるまで気づかなかったが02組は一貫してデジモンを倒さねばならない場面に遭遇していない。ダークタワーデジモン編でいちど悩み、デーモン軍との戦いではじめてその場面が訪れる。このあたりの気持ちの描写はかなり丁寧に作られていた。幼くしてサバイバルを生き残ったタケルヒカリのメンタルが異常に高いのとは対象的だ。

デジモンカイザーを裏で操っていたのがアルケニモンらだと分かり、アルケニモンらを操っていたのは人間の及川で、及川を操っていたのがヴァンデモン。

02の1年間の物語はすべてヴァンデモンの企みだったことが判明した。ここに行きつくまでが長すぎた。無印はデビモン→エテモン→ヴァンデモン→ダークマスターズ→アポカリモンと段階はありつつも要所要所できちんとボスを撃破してきた。

今回はボスを撃破しないからこそのデーモン軍戦でデジモンを倒すことにつながったが、ボス撃破がない分ジョグレス進化でのカタルシスがない。中盤からはひたすらアルケニモン達との小競り合いがつづく。もういっそロケット団方式に毎回ちゃんとやっつけてくれたほうがいいんじゃないかとさえ思う。アルケニモンの部下としてダークタワーデジモン3体用意してそれぞれジョグレスでやられるってのでもよかったかな。

 

ヴァンデモンって中ボスのイメージなんだけど、実際は真エンドのラスボスなんだよね。伏線が足りなくない?いや、まぁダークマスターズやアポカリモンとか考えたらボスに伏線なんていらねぇよ、とも言えるんだけど、ヴァンデモンだけ妙にしぶといんだよね。ヴァンデモンラスボスはカイザー編以後の展開ではお台場メモリアルのウェザーモンで匂わせてたからその頃には決まってたんだろうね。

せっかくなら及川周りも含めてもう少し散りばめても良かったと思う。伊織の父親の親友ってのは流石に走りながら考えた結果の終盤の思いつきでしょ?違ったならあまりにも無能な構成だよ笑

 

 

02の役割はなんだったのか?

無印と比較しても話題にならない02。無印で全力を出しすぎた結果の全般的に薄い印象になってしまったことがわかった。いやでも出来のいい兄貴と比べられる弟になってしまっている。

でも02はこれでいいのかもしれない。02最大の功績はデジモン世界の拡張だ。無印は太一ら選ばれし子ども達の物語だったが、世界にはもっとデジモンをパートナーにもつ子どもがいるということが明らかになった。ダークマターズ対策として「選ばれた」という意味では明らかに無印メンバーは格が違うけれども世界観を大きくしたことで様々な展開が可能になった。

そして無印に帰結してしまうけれども苦しい出来の「Tri 6部作」を経て「LAST EVOLUTION」につながる。

Triでさんざん無視されてしまった02組もラスエボ登場が嬉しい。散々キャラが立っていないと述べたが、だからこそもっと彼らの掛け合いを見たいのだ。ヤマトが大輔に調べものを頼むってのがおもしろい。あの役タケルも交えて02組での会話がもっとほしかった。(主役のひとりヤマトにスポットを集中させる必要があったのはわかる)

仲良くラーメンを食べに行くとか地味に好きな場面なんだよね。02組は大輔と京が賑やかし役で賢と伊織がコントロールという役割がはっきりしていた。02本編ってこの4人で活動することないからその関わり方が新鮮だった。

あと欲を言えばパイルドラモンくらいになってほしかったなぁ。

 

02のその後とこれからのデジモンコンテンツ

世界観の拡張という大役を務めた02という物語。拡張された世界やキャラの掛け合い等を含めて「もっと見たかった」というのが僕の見解だ。デジモンシリーズは無印の呪いから逃れるようにせっかく拡張したデジモン世界を捨てて別世界のデジタルワールドとの関わりを描く「テイマーズ」「フロンティア」と続けていった。

たしか無印02と「子どもが結局何もしない」という声を受けてカードでフォローしたりデジモンになったりして、より戦場で戦うようになっていった。

結果として無印からのデジモンからの乖離が大きくなり、デジモンシリーズは一旦幕を閉じた。不定期に再興を目指して立ち上がるが、デジモンを知らない世代に定着させるのはなかなか難しい。当時よりよほどデジタルが身近になっているのに、デジモンは再び無印に頼って復活をせざるを得なかった。

 

太一達を主人公とした新作のデジモンアドベンチャー

コロナウイルスのせいで全3話のウォーゲームしか公開されていないけれども、今後の展開はどう考えているのか。地続きの02メンバーを見据えているのかいないのか。

封印していた呪いの果実に手を出して、今度はそれを育成し直そうとしている。

今度のデジモンデジモン人気を取り戻す、まさに最後のチャンス。

 

ずいぶんと熱く語ってしまった。俺、こんなにデジモン好きだったんだなと再認識した 

 

ugatak514.hateblo.jp

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