総括『仮面ライダーゼロワン』高橋文哉くんと鶴嶋乃愛さんに支えられた1作。思惑通りに制作するのはやはり難しい。
令和1号ライダー、仮面ライダーゼロワンがついに最終回を迎えた。
思い通りに撮影ができない期間もあり大変だったと思うけど完走しきったことを労いたい。
AIロボット社会というテーマのSFをどう展開していくのか楽しみにしていた。
現代トレンドではあるけどそれだけに難しいテーマだったと思う。
ゼロワンはどんな世界観を描きたかったのだろうか。
ゼロワン世界観
ゼロワン世界は「人工知能搭載人型ロボットヒューマギア」が存在する世界だ。
人口減少が叫ばれる中、特定職業に特化したロボットが生活を支えている。
このロボットは衛生ゼアと常時接続されており、常にアップデートされ進化成長していく。
いわゆるSiriやアレクサのような音声言語系AIを搭載し、まるで人間と会話しているかのようにふるまう。そして会話や行動から様々なデータをラーニングして人間社会を支えてくれる。或人のいう「夢のマシン」だ。
便利な社会になっていくことは想定もしていない新たな危険を生む可能性があり、滅亡迅雷net.というヒューマギアテロ組織や、競合企業ZAIAの登場によりヒューマギア依存社会の脆弱性が問題となる。
正直なところ、この立場の違う三者の考え方をぶつけるという展開は非常に良かった。
僕らの社会もインターネットへの依存度が高まっている。そこへテロ組織のハッキングがあったらどう対処していくのか、正直検討もつかない。かといってこれだけ普及しているインターネットを手放せるかと言われれば、答えはNoである。
ヒューマギアに依存した社会でヒューマギアが暴走したらどうするのか、この問題が物語の大枠の構成だろう。滅亡迅雷が活躍するほど、暴走の危険のある「ヒューマギア」廃絶を謳うZAIAへの期待が高まる。ZAIAは自社製品で人間の拡張を狙う。
大枠ややりたいこともわかるんだけども、さまざまなヒューマギアを紹介してゼロワン世界を掘り下げれば掘り下げるほど、どうしても粗が目立ってしまう。
例えば、個人的には、ヒューマギアには現象していく人間の労働力を補う目的があるため単純置き換えのできる競合だとは認知していない。だけども、ゼロワン世界ではガッツリ食い合うらしい。ZAIAが飛電を買収してヒューマギアを軒並み回収していった。そして気づけばまたヒューマギアが普及している。
ヒューマギアもZAIAスペックもすぐハッキングされるし、いとも簡単に「アップデートしたから大丈夫です」「滅亡迅雷netを撲滅します」なんて高らかに会見してしまう。
どの程度細かく描写するのかは悩ましいところではあるけど見ていて色々気になってしまった。
お仕事紹介はゼロワンの大森プロデューサーの強い要望であり、仮面ライダーという作品と食い合わせが悪いというのも承知の上で推し進めたというインタビュー記事も読んだ。
言われてみれば構図上、或人が大切に思っているヒューマギアが暴走→破壊を繰り返してしまう。ドライな考え方でヒューマギアは替えが効くっていう側面を全面的に押し出すわけでもなく、あくまで「その個体」への想いを強くする。かと思えばマギア破壊後に代替機の働きを眺める或人はどこかスッキリした表情を見せる。戦闘中あれほどまでに「個体」への執着があったのはどこいったんだ?代替機に対してバツの悪い感覚なんかないのだろうか。
なんなら、ヒューマギアは衛生ゼアと常時通信していると思っているのだけども、ラーニングバックデータはあくまで本体ローカル保存なのだろうか。このあたりが釈然としないし特にフォローもされないからどうも毎回の戦闘後のカタルシスが足りない。
飛電或人役、高橋郁哉くんとイズ役、鶴嶋乃愛さん
いろいろと「?」と思う部分もあるけど、好きだったところもある。
或人役の高橋郁哉くんの演技と、鶴嶋乃愛さん演じるイズのキャラ造形、或人社長とイズの掛け合いはとてもよかった。
或人社長自体のキャラはふわふわした部分も多くて掴みきれないところがあったけども、高橋くんの演技はとてもよかった。
笑いをやるときの全力変顔やイズや各ヒューマギアを見る時の優しい顔が印象的だ。
戦闘中のキリッとした表情とのギャップもあり、喜怒哀楽緩急のある役を演じるのは苦労したことだろう。いま書いていて思い出したけれども、番組開始前のAbema特番で「ヒューマギアが感情がないので喜怒哀楽を強めに表現している」と語っていたような気もする。
対象的に感情を抑えなければならないイズも苦労したことだろう。
淡々と凛とした秘書を演じながら社長と戦闘の前線まで出てくる姿はまさにヒロインだった。イズといえば何度通りものシュミレーションを経てゼロツー完成に貢献する話が印象的だ。ヒューマギアは涙を流すのか、という禁忌に触れたが彼女の演技があったから成り立って居たとも思う。
高橋くん同様Popteenモデルの鶴嶋さんのアイディアで「前髪パッツンのほうが可愛いと思う」、「ヒューマギアだからちょっとあざといくらいでちょうどいい」とゼロワンの制作造形にも大きな影響を与えたのは間違いない。
そんな或人とイズの掛け合いは本編を通じて安定した面白さだったと思う。
「或人じゃないと〜」ハイテンションで寒いギャグを繰り返す社長に「ギャグを解説」「決め台詞をうばう」「笑顔検知0」などなどかなりのバリエーションを見せてくれた。完全にコンビ夫婦漫才だった。
どんなに厳しい戦いをしても話の終わりにふたりの掛け合いがあると、ほっこりした気分になってなんとなくいい終わり方をしたような気になる。
イズの対応に困りながらも嬉しそうな表情を向ける或人がかわいい。それまでピン芸人としてひとりでやっていただけに、返してくれる仲間がいるっていうことが大きな財産となっているのだろう。
全編を通して、或人は孤軍奮闘をしていた。父や祖父など家族は亡くなっている。長らく副社長にも認めてもらえてなかった。2号ライダーのバルカンと馴れ合うわけでなくさらっとした関係性を維持し続けていた。この距離感はジオウ&ゲイツやビルド&クローズとは大きくちがうものだ。
だからこそ全編を通して或人はイズだけに唯一心を開いているように見えた。調べたわけでないけども、もしかして胸の中の葛藤やモヤモヤを話していた相手ってイズだけだったりする?不破さんに悩みを話しているシーンが思い当たらない。。。
イズがいたからこそ真っ直ぐにヒューマギアを信じてきたのだろうし、イズが心の支えだった。
これまでの掛け合いが印象的だったからこそ、クライマックスのアークゼロ化が際立つ。積み重ねてきた部分が闇落ちへの説得力がある。
イズの喪失=気持ちをぶつける相手が誰も居なくなる→ひとりですべてを背負った闇落ち。
この流れは完璧だったね。美しかった。
高橋くんは表情をつけるのがうまいと思っていたけど、堕ちて行き場をなくしたどうしようもない感情はめちゃくちゃうまかった。悪意に支配された或人社長であったし、悪意に抗う或人社長でもあった。アズに唆されている自覚と葛藤、すべてが最高すぎた。
あんなにも惚れ惚れする闇落ち演技を見せられちゃうと、もっと社長を曇らせたくなる。
劇場版ではぜひともアズと対峙してほしい。
新イズとやりとりしてても旧イズとの細かな違いに違和感を感じてたらいいな。だけどちゃんとそれを受け入れて前に進むことを自分に言い聞かせる。
— ゆうがた (@ugata514) 2020年8月30日
それでも時々ひとりのときに旧イズを思い出して涙で枕を濡らしてたら最高。
アズの中にイズの残留データとかあればいいなぁ。 https://t.co/SmZQ99F3ol
— ゆうがた (@ugata514) 2020年8月30日
なるほど。
— ゆうがた (@ugata514) 2020年8月30日
①新イズへの違和感と旧イズへの思い
②アズの残留イズへの決別。涙ながらのアズ破壊
③新イズ「私は旧イズではありません」へのアンサー。受け入れ
こう構成すればキレイにハマるな
或人社長って休みのときはなにしてるんだろうか。或人が休みの日ってイズはどうしてるんだろう。ヒューマギアを紹介するだけなら社長が仕事としてヒューマギアに接するだけじゃなくて、休日を描写して日常的にヒューマギアに支えられているって回があったらキャラの掘り下げにもなるし一石二鳥だったのでは。
あと、戦闘シーンはよかった!戦闘に持ってく展開が大変そうだったけどバトルはよくできてたし、必殺技の演出も好きだった。
そう思うとお仕事にこだわり過ぎたのがやはりネックか・・・。
やりたいことが分かるだけに惜しくて歯がゆいな・・ゼロワン。
何はともあれ、1年間お疲れ様でした!