沈んでいく…。
もうなんでもいいや。
好奇心で踏み入れた沼だった。
「なんだか感情移入しづらいな」
はじめはこの程度の気持ちだった。
どちらかといえば退屈で、むしろ胸糞悪い気持ちさえも沸き起こった。
こんなの沼でもなんでもない。
いつでも抜け出せる。
そう思いつつも惰性でその沼で足を進めた。
そして気づくと足が抜けない地点まで到達してしまっていた。
足を止め、背中から倒れ込む。
沼に身体全体を預けるのが気持ちがいい。
沈んでいく…。
もうなんでもいいや。
ポエムのような平良の独白も、やはりイラっとしてしまうレベルの吃音も、不愉快なパシリも、レッスン通いの秘密も二人乗りの罰掃除も卒業のキスも、すべてが必要な要素だ。
しんどい。
そんな感情が先行していたハズだ。それなのに、どうしてだろう。こんなにも求めてしまうのは。
平良にとって清居が「美しい彼」だったのと同時に、清居にとっても平良も「美しい彼」であった。穴が空くほど見つめてくるその瞳は、清居にとっては何よりも美しかった。
自分の思いを口にせず、不器用にコントロールしようとしようとする清居。
思った動きをしない平良。王様はどっちだ。
まぁ、僕は断然小山くん推しなんですけどね。
このドラマのきっかけは完全に高野洸くんだし。(大学編まで出てこないのは知らなかった)
5話で清居の写真を見つけたあとの「泊まっていい?」って聞く行動力と、インターホンを「出ないで」といえる勘の良さ、そのまま清居に見せつけるように抱きしめて「好きだ」と語る狡猾さ。
キモいとか傷つける言葉は使わず、優しくふんわりと空気を軽くしつつも、着々と外堀を埋めていく周到さ。
叶わぬ当て馬役として満点すぎる。絶対的な原体験を共有している清居には敵わないのは自明。そもそもの出番も少ない。少ないターンで勝つために、持っているカードをガンガン使ってアグレッシブに攻めていくスタイルは圧巻だった。
清居に再会さえさせなければ勝ちだったはずなのにね。再会も清居の計略だっていうんだから完敗ですわ。
大丈夫。そんな積極的に攻めに転じることができるんだから、小山くんにはいつか良い恋人ができるよ。だから平良への気持ちは残念だけど、諦めてもらうしかない。
さて清居。君は平良に「選ばれた」民だ。
「これから打ち上げだけど来る?」「あいつとどっちが好きなんだよ」「電話かけ間違えた」
いつまでも上から「選ばせる」側でいるといつか足元を掬われるから気をつけなさい。
清居VS小山の奪い愛、バチバチでめちゃおもしろかったし、「うわっ」ってなるから。もう少し見たかったなー。