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『魔進戦隊キラメイジャー』戦隊レッドの在り方とは。価値観をアップデートした戦隊シリーズ

ミニアルバム 魔進戦隊キラメイジャー3

 

安定しておもしろい『魔進戦隊キラメイジャー』。仮に2月いっぱいの番組だとすれば残り2ヶ月。すなわち3分の2が終了したことになる。

12月のクリスマス商戦と2月の最終決戦のことを思うと、実質的な通常回は両手で数えるほどの数があるかどうかわからない。

 

昭和から続く戦隊シリーズ。その時代の子どもたちに魅力的に思ってもらうためには、常に最先端の価値観を投影しつづけなければならない。

こういった価値観のアップデートには「伝統や過去を切り捨てる」という印象を持つ人もいるけれども、時代は常に変化していくものであり、あくまでも過去からの延長のうえでの変化なのである。変化さえも拒んでしまったら我々はスマートフォンも使えないし車や電車で移動することもできなくなる。「今どきのものは対面でのコミュニュケーションをおろそかにする。自分の足で現場に向かおうとする姿勢がない」などと言われても困ってしまうだろう。

時代の変化のスピードがどんどんあがっている。僕自身も意識的に新しいものの情報を入手して、時代の流れにおいていかれないようにしたいと思う。

 

 

キラメイジャーはそんな「令和」の戦隊もののお手本のような1作だ。

平成の時代に40周年を迎えた「動物戦隊ジュウオウジャー」を最後に平成末期の戦隊はまだ名のない「令和」に向けた新しい戦隊像を模索していたように思える。

基本フォーマットの5人組を崩した最大12人戦隊のキュウレンジャーや、1年に渡るVSシリーズをやり遂げたルパンレンジャーVSパトレンジャー、等身大撃破からの巨大戦という構造にメスをいれたリュウソウジャー

目立つ部分だけでも、これまでのスーパー戦隊シリーズとは違うことにチャレンジしてきた意欲作である。

そしてそんなリュウソウジャーからバトンを渡されたのが今のキラメイジャーである。

過去から脈々とつづく様々なフォーマットを崩して再構成していまに至る。

 

キラメイジャーで特に印象的なのはレッドである熱田充瑠の存在であろう。

スーパースター揃いの他4色と違い、絵を描くことが好きな単なる高校生。頭脳明晰で作戦立案から味方のフォローなどをこなすイエロー・為朝のほうがよほどリーダーらしい。

従来の戦隊であれば充瑠と為朝は逆のポジションにいてもおかしくない。なのに充瑠がレッドとして主役になっているのがおもしろい。

 

過去に僕はレッドや戦隊でのリーダー像について思いを巡らせたことがある。

過去20年分を振り返ってみても 

〜2005年は熱血レッド(ガオ・ハリケン・アバレ・デカ・マジ)

〜2012年はクールレッド(ボウケン・ゲキ?・シンケン・ゴセイ・ゴーカイ・ゴーバス)

〜2019年はイケイケ巻き込みレッド(キョウリュウ・トッキュウ・ニンニン・ジュウオウ・キュウレン・ルパン・パトレン・リュウソウ)

 

時々例外もいるけれども、おおよそ5年〜7年くらいでレッド像が変化していると推測できる。

ゲキレンジャーはレッドが野生児なのでクールにしようがない。どこにも当てはめることができない完全なジョーカー的なイメージだ。あえていうならイケイケ巻き込みなのかな…。ゲキレッドとは対象的に初期メンバーの青黄は典型的なクール&熱血である。

ジュウオウジャーは大和先生はクールレッドに位置する。イメージ的にはジューマンたち野性味あふれる動物戦隊の取りまとめポジションだ。いわゆる苦労人の大和先生。

ルパンレンジャーはクールに、パトレンジャーは熱血に近い。とはいえクールだけども熱い、熱いけどもクール、というような完全にイチ側面だけでキャラクターが完結していないのは少し現代的な描き方である。

 

なお、僕の中でのイケイケ巻き込みとは「いいじゃん!やってみようぜ」とポジティブな感情を原動力に周りの背中を推すタイプだ。台風の目・チームの原動力・求心力ある人物のイメージ。熱血バカに近いが、意見を押し通すことは少なくあくまでカリスマ的に描かれる。周りもやれやれと思いながらも信頼を寄せていて「レッドがそういうならやってみようか。」という空気感をつくりだす。就職活動における「周りを巻き込んで何かを成し遂げた経験」を問われる世代であり、コミュケーション能力とカリスマ性が求められていた時代だと推察している。

 

リュウソウジャーからの流れでキラメイジャーはどうか、と聞かれると少し困る。

充瑠は確かに 僕の定義上の「ポジティブな感情を原動力に周りの背中を推す」ことはやっているような気もする。しかし、あえて「イケイケ」と表現するような無鉄砲さというか「考えていても仕方がない」といったような部分がいまいちしっくりこない。

 キラメイジャーのプロデューサーである塚田氏は「充瑠は従来の作品であればグリーン的なポジションに配置されるだろう」とどこかのインタビューで答えていた。その言葉は僕の中でストンと腑に落ちるものがあった。たしかに、充瑠がグリーンポジションに配置される戦隊ものはイメージが湧く。当然為朝がレッドポジションに入る。するとなんとなく同じく塚田Pのデカレンジャーのキャラクター像に近くなる。キラメイジャーはデカグリーンのせんちゃんがレッドだったような立ち位置になる。

 

完全にイメージだけれども、いわゆる戦隊ごっこの在り方も変わったんじゃないだろうか。(実態はわからないのでイメージです)

これまでであれば目立つような子がかっこいいレッドやクールなブルーを奪い合う。グリーンのようなポジションは正直あまりものな印象だった。でもキラメイジャーで戦隊ごっこをしようとすると「かっこいい」「クール」(おもしろい)はイエローとブルーに振り分けられる。目立つポジションを求める子に押されがちな控えめな子でもレッドポジションが回ってきてるんじゃないかな。

もし仮にそうだとすれば子どもたちに「どんな子でも誰でも主役になれる」と希望をあたえることができると思う。小さい子には「どうせ僕は余り物」みたいな気持ちを持たせず自己肯定感を育んでもらいたい。

 

長く続いた戦隊シリーズ。常に試行錯誤しながら時代に合わせて少しずつ変貌を遂げてきた。そして令和1作目「魔進戦隊キラメイジャー」はキラキラと輝くことをテーマに前向きで明るくちょっと昔ながらの懐かしさを含ませながらも価値観アップデートを徹底している。コロナでエピソードが減ったのは非常に惜しいが間違いなく代表的で名作になるだろう。

クライマックスに向けての着地点が楽しみだ。

 

ugatak514.hateblo.jp